父の記憶

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大翔(ひろと)、待っていたわ。入って」 私は玄関で彼を迎えるとダイニングへ案内した。 大翔(ひろと)の顔を見て、母が嬉しそうに微笑む。 彼もテーブルの上に広げられた夕食を見て声を上げた。 「凄いな! 美味しそうだ。ありがとうございます!」 大翔(ひろと)は嬉しそうにテーブルに腰を降ろした。直ぐに母が彼にビールを注いだ。 いつも私達は二人きりで夕食を食べるから、夕食に大翔(ひろと)が加わるだけでも、とても賑やかに感じる。特にビールを呑んでご機嫌になった大翔(ひろと)はいつも楽しそうに私や母と話すから、その賑やかさが一層際立っていた。 「はい、ネギチャーシューととんぺい焼きよ。ビールはもう一本開ける?」 母が追加のおつまみを作って持って来た。 「はい、ありがとうございます。それじゃ、もう一本」 大翔(ひろと)は嬉しそうに答えた。 「本当にお義母(かあ)さんの料理は美味しいな。愛がこもっているよね」 ネギチャーシューに箸を付けながら、大翔(ひろと)が満足気にしている。 「私の料理もお母さん仕込みで美味しいでしょう?」 私がそう言うと、大翔(ひろと)が満面の笑みで答えた。 「うん、そう思うよ。まいったな、(みお)と結婚したら太っちゃうかも……」 その大翔(ひろと)の言葉にダイニングで笑い声が上がった。 ビールを持って来た母がテーブルに腰を降ろして大翔(ひろと)を向き直った。 「大翔(ひろと)さん、お仕事の方は忙しいの? 電気自動車の開発担当って(みお)から聞いたけど……」 とんぺい焼きを口に運んで大翔が頷いた。 「今、架橋ですね。新しい開発を沢山するので。特にバッテリーの開発が苦戦中ですが、大丈夫です、(みお)との結婚式の前には落ち着きますから……」 母が嬉しそうに頷いた。
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