父の記憶

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夕食後、大翔(ひろと)は私の部屋を訪れた。 私は大翔(ひろと)に椅子を進めた。彼が腰掛けると私は自分のベッドに座った。 「(みお)の部屋久しぶりだな……」 彼が私の部屋を見渡して、両腕を伸ばし大きな欠伸をした。 「大翔(ひろと)、今日はちょっと呑み過ぎね」 彼が大きく頷いた。 「料理が美味しくって、お義母(かあ)さんと(みお)との話も楽しくて、ついね……」 その言葉を聞いて私はとても嬉しくて幸せだった。大翔(ひろと)はもうすっかり私達の家族だ……。 「でも明日は十時から結婚式場でプランナーさんとの打ち合わせよ。遅れないでね」 私は釘を刺す様に大翔(ひろと)に言った。 「分かっている。明日は(みお)のウェディングドレスを決めるんだよな。楽しみ」 そう笑顔を浮かべる大翔(ひろと)を私は本当に(いと)おしく感じていた。 大翔(ひろと)が突然立ち上がり、私の部屋の本棚を眺めている。彼の指が二段目のある背表紙の所で止まった。それは私の古いアルバムだ。 「これ見てもいい?」 大翔(ひろと)はそう言いながら、もうアルバムを本棚から取り出している。 「ダメって言ったって見るんでしょ? いいわよ。でも私の小さい頃の写真は少ないわよ。父の顔が写っていたのは全て捨てたから」 大翔(ひろと)はアルバムを持ってベッドの私の横に座った。そしてアルバムを開いた。 「赤ちゃんの(みお)だ。へえー、可愛いじゃん。お母さんも凄く若くて綺麗」 大翔(ひろと)が見ていたのは、母に抱かれている生まれて数ヶ月の私だった。大翔(ひろと)は次のページを(めく)る。 「あっー、裸だ。これは他の奴に見せたくないな」 それは私が三歳くらいの時のお風呂に入っている写真だった。 「ちょっと見ないでよ!」 私は慌てて写真を手で隠そうとした。 「この後ろに居るのが、お父さん?」 その写真のお風呂に入っている私は、男性の両手に抱かれていた。その人の顔はフレームの外に切れていたので、肩より下しか写っていなかったが、ガッシリとした逞しい身体だ。
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