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私はシャワールームから出ると部屋に戻り出勤するため身支度を整えた。
そして階下に降りると台所で母が鼻歌混じりに朝食の準備をしていた。
「お母さん、おはよう。ゴメン、今日は私の食事当番だったわよね……」
台所から顔を上げ母がニッコリと笑った
「おはよう。澪。いいわよ。その代わり明日はお願いね」
私は大きく頷くと母を手伝って朝食の準備を済ませ、ダイニングのテーブルに食器を並べる。母娘での朝食は私達のいつもの日常だ。
「澪、会社はもう慣れた?」
「えっ? うん、もう二ヶ月だからね。新人研修も終わって、今は先輩の方と一緒に営業に回っているわ」
私は母の問いに笑顔で答えた。
「えっ? 先輩って男の人?」
母が口角を上げて聞いてくる。
「残念、女の人よ。高杉美穂先輩。二年上の先輩なんだけど、仕事もバリバリでとても格好いいの。私は先輩にすごく憧れているの。私も先輩みたいになりたいって思っている」
「そうか、まずは社会人としてしっかり学ぶのも大事ね……。頑張りなさい!」
「うん、ありがとう! お母さん」
私はこんな母との毎日の会話がとても心地よく感じていた。母は本当に私のことを愛してくれている。
私達を捨てた、父と違って……。
「それじゃ、行って来ます!」
「気をつけるのよ!」
「うん、分かった!」
私は背中から聞こえてくる母の声に大きく頷いて、自宅を後に会社に向かった。
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