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大翔との出逢い
揺れる満員電車の中で、その時私は違和感を感じていた。
前の駅から乗り込んで来た後ろの男性が私の背中に身体を密着させているのを感じる。
(この人……嫌だな……)
私は少し背中を捩って身体の向きを変えた。しかし今度はスカートの上からお尻を触られて私は息を呑んだ。
(えっ?)
そして背後から男の荒い息遣いが聞こえる。
(何っ? 痴漢!?)
私は身を硬くした。でも男の手の動きは止まらない。私は叫ぼうとしたけど怖くて声が出ない。その男は更にスカートの中に手を伸ばそうとしている。私は恐怖で震えていた。涙が溢れて来るのが分かる。
(……誰か! 助けて!!)
私は怖くて心の中でそう『叫ぶ』のが精一杯だった。
その時だった。
「お前! 何やってるんだ!?」
突然、背後から男性の声が聞こえて、私のお尻を触っていた手がハッとして離れて行った。
振り返ると、背の高い若い男性が五十歳くらいの中年のおじさんの右手を掴んでいるのが見える。
「お前! なんだ? 俺の手を離せよ!!」
そのおじさんは大声で叫んでいた。
「貴方、痴漢していたでしょう!? 次の駅で降りて下さい!」
彼はそう言うと、私に声を掛けてくれた。
「大丈夫……? 怖かったね……。君の証言が要るから次の駅で降りてくれる?」
私は彼を見上げて、コクリと頷いた。
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