大翔との出逢い

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その男性と駅の事務所に行き、痴漢の証言をした。その後、駅にやって来た警察官によるとそのおじさんは痴漢常駐者で、前科があるとのことだった。 あとの処理は警察に任せ、私達は二時間程で解放された。 結局、仕事には遅刻することになり、携帯で会社に連絡を入れていると、横で私を助けてくれた男性も電話をしている。 私はハッと思って彼が電話を終えると、彼の前で大きく頭を下げた。 「……あの……助けて頂いて……ありがとうございます。それに会社に遅刻されて。申し訳ありません」 彼は驚いた様に私を見つめていると、満面の笑顔を見せてくれた。 「あっ、いや、問題無いよ。困った時はお互い様だよね」 その弾ける笑顔に私の心臓がドクンと大きく波打った。 「それじゃ、また。気を付けてね!」 それが彼、木本大翔(ひろと)との出逢いだった。 この時私は、この出逢いが私の人生を大きく変えることになるとは考えてもいなかった。
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