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初めての恋人
翌朝、私は電車に乗って周囲を見渡していた。そう私はあの男性を探していたんだ。私を助けた彼はきっといつも同じ電車で通勤している筈。
私は昨日、連絡先も聞かずに彼と別れてとても後悔をしていた。私を助けてくれたあの男性。あの弾ける笑顔を想い出すと胸がキュンと締め付けられる。私はもう一度あの男性に逢いたいと真剣にそう願っていた。
そう私は彼に一目惚れしてしまっていた。
でも一週間経っても彼を見つけることは出来なかった。多分、彼の通勤電車はこの時間じゃなくて、あの時はたまたま”あの電車”に乗っていたのだろう。
「はぁ……」
今日も彼を発見する事が出来なくて、私は大きく肩を落としていた。
その時だった。
「あの……」
私は突然、後ろから声を掛けられた。
私が振り返ると、そこにはあの男性が立っていた。
「やっぱり君か……」
その男性が振り向いた私の顔を見て再び満面の笑顔を浮かべる。そうこの笑顔に私は一目惚れしたんだ。
「はい。あっ、あの時は本当にありがとうございました。もっとちゃんとしたお礼が言いたかったのですが、連絡先が分からなくて……。良かった。お会い出来て」
私は頬が火照っているのを感じていた。
「うん、僕も君に会いたかったんだけど、この一週間は大阪出張だったんだ」
電車が次の駅に近づいて減速を始めている。
「ごめん。僕の会社、次の駅なんだ。これ」
そう言って彼はスーツのポケットから名刺を渡してくれた。
「僕の名刺。そこにメールアドレスあるから後で連絡してくれる?」
私は受け取った名刺と彼の顔を見比べた。
「はい、ありがとうございます。必ず連絡します!」
彼は「うん」と頷くと、丁度開いた電車のドアからホームに駆け降りて行った。
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