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扉が閉まり、その駅を電車が発進すると。私は今起きたことを反芻していた。胸がまだドキドキしている。そしてこの幸運を私は神様に感謝した。
彼から貰った名刺を見ると、そこには日本一の自動車メーカの会社名が書かれていた。
「豊国自動車株式会社 商品企画本部 先進車両企画課 木本、えっと大翔? これどう読むんだろう」
私が名刺を裏返すと英語表記が書かれている。
「HIROTO KIMOTO。ひろと……大翔って読むんだ」
私はその名刺を胸に抱いて、小さな幸せを噛み締めていた。
私は会社の昼休みに彼の会社のアドレスにメールをした。直ぐに彼から連絡があり彼の個人のメールやSNSの連絡先が送られて来た。私はそれを直ぐにスマホに登録した。そのまま会話を始める。
【木本さん。本当にありがとうございました】
【当たり前のことしただけだから。問題ないよ】
【あの……、今度、お礼にお茶でもどうですか?】
【えっ? いいよ。いつにする?】
私は「Yes!」って大声を出した。
ハッとして周りを見渡すとオフィスの横に座っている美穂先輩が口角を上げて私を見ている。
「澪さん、どうしたの? その感じは男性関係かな?」
「あっ、はい。スイマセン、大声出して」
美穂先輩は笑顔で頷いている。
「うん、仕事だけじゃなくて恋愛も大事よ。そのバランスが取れる人が仕事の能力も高いのよ」
私はそう言う美穂先輩も外資系銀行に勤める美男子の彼氏が居ることを知っていた。
「はい、ありがとうございます。頑張ります」
そう言いながら、私は少しだけ不安だった。私はこれまでの人生で男性とお付き合いしたことが無かったからだ。そう、これまではいつも私から男の子を避けていた……。
でもこの出逢いだけはこれまでと違う……と私はそう感じていた。
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