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しかしだからといって、点加はあのくそ面白くもない日々を再び繰り返すつもりはなかった。これから入学する中高一貫校では、今までの失敗を糧として、輝かしい学生生活を送るのだと決めていた。そこでは美しい心の持ち主も、愚かな心の持ち主も、皆平等に愛するつもりだった。
その学校は都内の一角にあった。校舎はガス臭い大通りに面して建つ、暗いマドレーヌ色をした、長方形の建物である。創立してまだ20年も経たぬ私立校で、そこそこ高い学費のために、お嬢様学校と言われていた。偏差値は全国ランキングの真ん中くらいであったが、オリジナルデザインの制服は全国トップクラスの人気で、それ目当てに入学してくる生徒も少なくなかった。
点加がそこを選んだ理由としては、家からそこそこ近いということと、受験したいくつかの学校のうち、そこしか受からなかったということ、そして女子校ということだった。自分と同じ性別の生徒しかいないというのは、点加にとって魅力的な事実であった。点加にとって男子というのは得体の知れない、怪物のような存在であった。物事を思い通りに運ぶのには、いささか邪魔な種類の生物のように思えた。その条件さえ満たしていれば、あとはなんでもよかった。もっとも、ごく平凡な収入の点加の家庭にとって学費は決して安いものではなかったが、中学受験のために金をつぎ込んだ娘が結果的にそこしか受からなかったので仕方がなかった。
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