ポルノ&マングース(中学二年生、秋)

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 休み時間になると、明日香がいじめを始める。    いじめのターゲットはおよそ1ヶ月おきに変わった。大抵は地味で見栄えのしない、陰気な生徒が選ばれた。もしくは単に明日香の気に入らないという理由で、標的にされることもあった。    今いじめられているのは宮沢さんという生徒だった。前学期で学級委員をしていた宮沢さんは、事あるごとに先頭に立ってクラスを仕切り、言うことを聞かぬ明日香たちをあからさまに毛嫌いし、見下した。その排他的な姿勢が、明日香の癪にさわったらしい。    チャイムが鳴ると、宮沢さんがトイレに立った。明日香とエリと取り巻き数人とは、無言で視線を交わし合った。それから素早く教室の隅に置かれてあるロッカーの前へ群がると、宮沢さんのロッカーの鍵を殴り壊して、中にあるものを勢いよく外へ放り出し始めた。教科書、ノート、体操着、ブランケット。  手下の手によって次々に宙へ放り出されていくそれらを見て、明日香は狂乱的に笑った。そんな明日香を、周りの生徒は畏怖しながら見つめる。明日香が腹を抱えて笑うたび、スカートからすらりと伸びた棒のような二本の足が、今にも折れてしまいそうに震える。
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