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冷たい木枯らしの吹く放課後だった。みどりと点加とは連れ立って廊下を歩いていた。みどりの一歩は点加の一歩半に相当したので、点加はみどりに遅れを取らぬよう、足をゲジゲジのように細かく動かし続けなければならなかった。
渡り廊下の隅で、寄り集まって楽しそうに話している集団を見かけた。それは光と美鈴と春香であった。点加はいち早く気がついて、慌ててみどりの巨体に隠れた。おかげで向こうに気づかれないで済んだ。点加は彼女たちから見えないところまで進んでいくと、ようやくほっと一安心して、みどりから離れた。
「おい」とみどりがドスを効かせた声で言った。
「なんだよ」
「今お前、人を盾に使っただろ」
「悪いかよ」
「チッ」みどりは盛大な舌打ちをした。「向こうはお前のことなんか、これっぽっちも気にしてねえよ」
点加は悔しくて黙り込んだ。みどりは一年の時に美鈴たちと同じクラスだったので、かつて彼女たちのバンドに点加が所属していたことをしっかり知っているらしかった。点加は「色々あんだよ、うるせえな」と吐き捨てた。
「だれに口きいてんだよ」みどりは拳を振り上げた。
「やめて」点加は素早くみどりから飛び退った。みどりは拳を下げると、言い捨てた。
「よく考えてみろよ。うちのクラスの山田と高橋の方が、何千倍もタチ悪ぃだろ」
「…そうかな」
「そうに決まってんだろ。あいつら、絶対いつかバチ当たるから」
点加はしかし、曖昧な返事をして、ごまかした。明日香たちにバチが当たるのなら、見て見ぬ振りをしている自分たちにもバチが当たるのに違いない、そう思ったのだった。
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