ポルノ&マングース(中学二年生、秋)

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 点加の心臓は高鳴った。明日香たちはもうすぐここを通るに違いない。そのとき、一緒に行こうと頼めば、一緒に行かせてくれるかもしれない。  点加は素早くみどりと明日香とを天秤へかけた。自分の作品を認めてくれている明日香。やることなすこと全てをバカにし、見下すみどり。これからの自分にとって、どちらが大切かは、明らかであった。 「いいよ。明日香たちと行くから」点加は決意の眼差しを向けた。みどりが殺気立つのが、その一瞬の目つきの変化から感じられた。二人は数秒の間、にらみ合った。みどりは点加が謝るのを待ち構えているように見えた。しかし点加の様子に、今までにない強気を見て取ると、「好きにすれば」と吐き捨て、その場を立ち去った。  点加はばくばくする心臓を必死に抑えながらもう一度密告相手へ向き直った。彼女から聞き出せたのはしかし、学年主任が血眼になってその本を探しているらしいことと、誰かがチクったのではないかという、ひどく曖昧な情報だけだった。  チャイムが鳴った。彼女は1秒でも早く点加から離れたいと言った様子で、そそくさと教室に戻っていった。ほぼ同時に廊下の扉が開いて、エリと明日香とそのお付きの一団が現れた。  明日香は点加を見つけるやいなや目を見開いて、廊下いっぱいに響き渡る声で、「テンカ先生じゃあーん!」と言った。そしてすれ違いざま、点加の頭に手のひらを乗せて、乱暴に撫でた。  点加はヘラヘラ笑いながらその後を必死に追いかけて、「みどりに置いてかれたから、一緒に行っていい?」と尋ねた。明日香は「はあ?別にいいけど」と言った。  それから明日香が下品なことを言った。するとエリや、お付きの者たちが、一斉に笑った。点加はひときわ大きい声で笑った。一団は笑いながら廊下をひた走った。すれ違う先生たちの険しい目が、こちらに注がれるのを感じた。  あの視線はもはや、エリと明日香だけに注がれているのではないのだ。そう思うと、点加は恐怖よりも、強い喜びを感じるのだった。
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