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「服装が違うからわからなかった」
つい言い訳めいたことを言ってしまう。
「そう。そんなに印象薄かったかな?」
「イメージが違いすぎるからわからなかったんだ」
「ふーん。…もう今日の仕事は終わり?」
「え?」
「抜けようよ。おいしいチーズとワインはどう?」
フランクな言葉遣いになって、彼は俺の腰を抱いた。
上から見つめられることが滅多にないのでドギマギした。
「いや、俺は……、遠慮するよ」
「僕が怖い?」
人懐こい笑みを浮かべているけど油断ならない感じがする。
「そうじゃない。でも予定があるから」
「実行委員長の彼?」
また口づけられた。
腰を抱かれたままなことに気づいて、はっと体を離した。彼は引き留めずに両腕を上げて楽しげに俺を見ている。からかってるのか?
「彼と遊ぶより、僕のほうが楽しいと思うよ」
パチャラがバルコニーから中庭に顎をしゃくった。
そんな尊大な態度も嫌みに見えない。見下ろした先には、マイクを持ってお祭りを盛り上げているアーティがいた。
「彼はかわいい顔して、とんでもなくエグいセックスが好みだよ」
突然の暴露発言に俺は目を丸くした。
「どうして、そんなことを?」
「貴族社会では有名だからね。君にはそんなところを見せていないだろうけど、彼はなかなかのサディストで君をめちゃくちゃに抱くつもりだよ。自分より大きな男を虐めてひいひい言わすのが好きなんだ。前から君を狙ってたんだろ」
しゃあしゃあと驚くことを言い放つ彼は、挑発するような笑みを浮かべた。
それが本当かどうか、俺には判断がつかない。
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