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「おはよう」
目を開けたら爽やかな笑顔があった。
「……無茶しやがって」
鈍く痛む腰をかばいながら、そっと寝返りをうった。
股関節辺りがぎしぎしするし、腰は重だるく、奥にはまだ何か入れられているみたいな感じがする。
一体何度、絶頂に追いやられたか、最後のほうはほとんど意識が飛んでいて覚えていない。というか思い出したくない。
追い詰められて自分が何を口走ったか、正気では思い返したくなかった。
自分があんなふうになるなんて、まったく予想していなかったのだ。「うわわわわわわああああああ」と大声上げて転げまわりたい気分だ。
そして落ち込んでもいた。
俺は今まであんなに相手を感じさせたことがあっただろうか。相手に不満を言われたことなどないけれど、我を忘れるほど快楽におぼれさせるなんて技術は持ち合わせていなかった。
実は物足りなく思っていた奴もいたのかもしれない。
童貞だった俺と違って、抱いた相手はほとんどが経験ありで中には相当の手練れな雰囲気の男もいたのだから。
昨夜のセックスは、入れて擦って突いて出すという手順ではまったくなかった。こんなやり方があるのかと驚くことばかりだった。
「何考えてるの?」
俺がしてきたセックスはかなり稚拙だったのかもしれない。パチャラに抱かれてみて、悔しいけれどそう思う。
「とても素敵だった」
機嫌のいい微笑みを浮かべて、パチャラが肩を抱き寄せてキスをした。抵抗する気力が出なくて、されるままにしていると足の間に手が滑りこんでくる。
「おいっ」
「んー? 様子を見るだけだよ」
何の様子だ。
あれだけしたら反応しないっつーの。
「な、なに?」
ぬるりとしたものを奥に塗りつけられて思わず身を引くと「薬だよ。腫れたら困るだろ」とさらっと言った。誰のせいだと思ってんだ。礼を言う気は起きなくてそっぽを向いた。
「もう気が済んだだろ。帰る」
のろのろと体を起こして座ったが、立ち上がる気力がまだ出ない。そんな俺をパチャラはくすくすと笑って見上げた。みだれ髪でベッドに寝そべったままでも上品そうって、これは生まれつきなのか?
「せっかちだなあ。洸はもっと時間をかけたほうがいい」
「時間をかけるって何にだよ?」
「何事も。会話も恋愛もセックスもって言えばいい?」
何となく気まり悪くて俺は黙り込む。
「知らなかっただろ。僕が去年から君を見てたこと」
「知るわけないだろ。ていうか、去年からって?」
「ああ。去年の留学生歓迎会で洸と話をしたんだ。忘れた?」
そんなパーティがあったことは覚えている。
この国に来たばかりで不慣れな地酒を飲まされて、かなり酔っぱらってしまった。しかも翌日、不可解なことがあったから記憶に残っていた。
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