だから君はもう僕のもの

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「本場も何も、盆踊りなんて簡単だし誰でもできるって」 「まあまあ、最初だけだから」  一般来場者は盆踊りを知らないから初めにすこし練習時間を設けた。田中は櫓の上でみんなの見本になるはずだった。その代役をやれと言われているのだ。  そのくらい簡単なのだが、わざわざここまで来たのはアーティと話をしたかっただけだ。きっと彼もそれくらいわかっている。 「ね、僕の頼みだと思ってきいてよ」  アーティは思わせぶりに微笑んで、俺のタキシードに指を滑らせた。 「代わりに何かくれんの?」 「何でも」  ふわりと微笑む彼に口づけると、待っていたように唇が開いて深いキスを誘われる。舌先でつつかれて俺は素直に誘いに乗った。  優しげな面差しの彼は、意外に情熱的なキスをした。 「早瀬さん、モテるでしょ」 「どうして?」 「キスがうますぎ」 「そんなことないよ。君こそ」  濡れた唇で笑った彼は「そう?」とおっとり微笑んだ。  かわいい顔だけれど、かなり経験があるのかもしれない。そりゃそうか。この国ではこのタイプは放っておかれないだろう。 「じゃ、お願いね」 「続きはあるのか?」 「…お祭りの後かな?」  上品に微笑む彼にうなずいて部屋を出た。何とか涼しげな顔を保っていたが、内心ではやったっとガッツポーズを決める。  アーティが俺に気があるのは気づいていた。ゲイだと隠す気がない彼は、知り合った最初から素直に好意を表してくれていたから。  でもこうしてあからさまに誘われたのは初めてだった。俺を見上げた目がうるんで頬がうっすら上気していた。それが色っぽくてそそられた。  かわいい顔をして意外なくらいキスがうまい。きっとセックスもいいだろう。俺は甘い期待を持って着替えに行った。今夜が楽しみだ。  
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