だから君はもう僕のもの

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 引き寄せられるような目力に視線を外せないでいると、小柄なほうが振り向いて俺を見た。彼は知っている。日本語学科で首席の学生だ。二人は俺を見たまま何か話している。  ムッとした。  どんな噂話をしているか分からないが、何となくいいことは言われていない気がしたのだ。 「よう、早瀬。盆踊り、カッコよかったんやて?」 「ああ。ありがと」  田中が声を掛けてきた。舞台のほうは終わったらしい。両手にカキ氷を持っている。 「悪かったなぁ、急に代役なんか振ってしもて。これ礼な」  右手に持ったマンゴーカキ氷を渡してくるから受け取った。左手にはパイナップルのカキ氷だ。 「別にいいよ。田中のせいじゃない、仕方ないだろ」  カーッと田中は変な声を出した。 「ホンマ、イケメンは何しても様になんねんな」  何してもって、ただうなずいただけなのに。氷が溶けてしまうから、さっさと食べ始める。 「何もしてないだろ?」 「ええねん。生まれつきのキャラっちゅーんはどうしようもないからな」  田中はにかっと笑って、さばさばと言ってカキ氷を口に入れる。田中は格好良くはないが、愛嬌のある顔と性格で誰からも受け入れられるタイプだ。愛されキャラと言うのか、いつも人が集まってくる。 「俺は田中が羨ましいよ」  笑って軽く言ったがこれは本心だ。  俺がもし田中だったら、日本でもそれなりに仲間を見つけて楽しく過ごせたんじゃないだろうか。  日本ではカミングアウトなんてできなくてゲイだと隠していた俺は、中学高校と女子からモテたけれど、誰とつき合っても恋愛感情を持てず振られてばかりだった。  大学に入っても同じで、誰にも心を開けなかった。無理して女子とつき合うのはやめたけれど、男とつき合う勇気も持てず、悶々と過ごしていた。
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