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初めての街は近代化に伴い
多くの問屋や商店で賑わいを見せていた。
…華やかな着物や洋物に身を包んだ若者たちが練り歩く。俺は沢山の人達に圧倒されて、ぶつかりながら歩いてしまう。
見兼ねた清がさっと戻ってきて
『こっちに』
俺の手を繋ぎ…道端に連れ出してくれた。
『あ、りがとうございます』
『私も初めて街を歩いた時…沢山の人とぶつかって怒られたよ』
清がクスッと笑う
…そうなんだ。
清と一緒にいると…安心する。
来たばかりの頃は不安で家族と離れた寂しさでいっぱいだったけど…今は
今は清がいないと俺…
少し歩くと色鮮やかな飴屋の屋台が見えてきた。子どもの頃は買えなくて遠くから眺めていたのを思い出す。思わず…屋台の前で立ち止まってしまった。
清も静かに立ち止まって
『仕方ないな。どれがいい』
『え…あ…』
困惑して清を見つめると
微笑みながら俺を見つめてくる
……恥ずかしくて顔が熱くなった
『買ってやる。ほら、どれがいい』
『あ…これがいい、です』
俺が指をおずおずと差し出した先には
まん丸の俺の手のひらよりも小さい
べっこうが串に刺さった飴だった。
コロンとした形が可愛くて……。
『おじさん、これ2つ』
清が飴をおじさんから受け取り
俺に差し出してくれる。
『…ありがとう』
クスッと優しく微笑まれると
…顔が赤くなりそうで
思わず目を反らした。
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