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そのまま抱き寄せ…
襟元に手を差し入れようとした所で、急に蜜が俺の顔を…ほんのりと赤らめた頬をしたまま見上げてくる。…ああ、可愛い。そんな…潤んだ瞳で見つめられると歯止めが効かなくなりそうだ。俺もまた自身の顔が赤くなった様な気がした。蜜が抱き寄せる俺の腕に手を寄せ、遠慮がちに
『ですが…このままでは澤名様にお酌が出来ません』
と、囁く。蜜は懸命に俺をもてなそうとしてくれているようで。邪な想いで蜜に手を出し掛けたが…思わず手を引っ込める。
『そうか…ならお酌してくれ』
『はい』
蜜は俺の胸から身体を起こし
『どうぞ、今宵のお酒は鹿児島の薩摩にございます』
震える手先でお酌してくれた。それがあまりにも愛らしく。溜まらなかった。蜜の髪の香りと注いでくれるお酒に酔いしれる。
『…香りがいいな』
『お気に召されたなら良かったです』
『いや…』
そっと蜜の髪に触れ…
『蜜の髪だ。まるで花の蜜の様だ』
指先で髪を擽る様に触れた。そのまま髪に口付ける。蜜が戸惑いの表情を浮かべるが…それでも遊ぶ手を止めなかった。いや、止められなかった。俺が見つめると、少し照れた様にはにかむ蜜。そのまま頬に触れようと手を伸ばしたが…
ふと、蜜が隣の寝殿に視線を移し
次の瞬間…切ないような表情に変わる。
…何でそんな顔をするんだ
視線の先には…清がいた。
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