昼想夜夢(仟之助)

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翌日になり… いつの間にか眠っていた瞼をゆっくり開く。腕の中には、昨日のまま蜜が眠っていて…その姿がいちいち可愛いくて仕方がなかった。蜜の漆黒の髪の毛にそっと顔を埋める。蜜の体温を感じるだけでこんなにも幸せな気持ちになれるなんて。はだけた俺の上衣を蜜の身体に掛け直し……蜜が薄く目を開けた。俺は咄嗟に目を瞑り、寝た振りをしてしまう。昨日は泣かせてしまったから…。どう目を合わせれば良いかわからなかったから。 …蜜は俺の顔を見つめた後に、腕から抜け出そうとし始める。それが急に切なくなって。再び蜜の身体を抱き寄せ、胸元に引き寄せた。蜜の身体が小さくビクッと跳ねたのがわかる。…やはり怖がらせてしまったか。 『昨晩はついやり過ぎた』 精一杯の詫びを呟いた。 もう少しだけ。もう少しだけ… 『もう少しこのまま触れ合いたい』 蜜の耳元で囁く。 『蜜…』 嫌われたくない。蜜に好かれたい。 …こんな気持ち初めてで戸惑う。 しばらくするとすぐに清が起きてきて。俺達を見た…一瞬、切な気に瞳が揺れるがすぐに微笑し俺を見る。蜜が身体に力を入れて起き上がろうとしたが、俺はそれを許さなかった。蜜を腕に閉じ込めたまま清を見る。 …お前の相手は貞成だろう。 俺の空気を察してか 清が目を反らして朝食の用意を始めた。 『あ…の、澤名様…』 蜜が静かに口を開き 『朝食の用意を致しますので』 云いながら俺の腕を押して抜け出す。本当はまだ蜜の体温を感じていたかったが…無理強いはしたくなく、渋々腕を離した。 蜜は清を見て…凄く安堵した様な表情を浮かべる。そんな蜜の顔を見て胸が焼ける様に痛んだ。 蜜がお膳に乗った朝食を俺の前に差し出す。お膳の上には小鉢が三種、焼物一種、汁物、白飯が並ぶ。海藻の胡麻合え、椎茸の佃煮、梅鰹。焼き魚は太刀魚。豆腐と白葱のお味噌汁。一つ一つ丁寧に置いて…蜜が俺に引きつった様に無理矢理、笑顔を繕って微笑する。 『澤名様…お召し上がりください』 そんな蜜に思わず苦笑が漏れた。 蜜の頬に優しく触れながら 『…俺が怖いか?』 と問う。怖がらせてしまったから当然か。しかし恋という(やつ)は何故こんなに…独占的になるのだろうか。俺は自分に苦笑し朝食を頂いた。
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