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それからまた局社に戻り…忙しい日々が始まった。二日に一度程の泊まり込みもこなして…また蜜に会えない日々が続く。
だが、文だけは仕事の合間に綴り送り続けた。
〃蜜、あの夜は会えて良かった。少々意地悪を云ってすまない。蜜の顔を見ると弄らしくてつい意地悪を云いたくなる〃
〃今日も仕事で泊まりだ。今日も会えない。会えなくても、何度も何度も蜜を思い出す〃
〃蜜に会いたい〃
〃出掛けたいな。町や河川をゆっくりと二人で歩きたい〃
〃今日は余りにも忙しく疲れた。蜜は体調大事ないか〃
毎日毎日綴っては郵便受けに投函する。
そして毎朝文を郵便社に取りに行く。自宅には中々帰れないし…執事に見られても厄介だからいつも文は自分で取りに行く。取りに行くのも楽しみの一つなのだ。
そして局社に戻る途中で蜜からの文を読む。
〃澤名様、あの夜は訪問ありがとうございました。触れられのは恥ずかしいですが、嫌ではないです…。自分でも不思議なのです。私もまた澤名様に触れたい〃
〃お仕事お疲れ様です。毎日ご苦労様でございます。私は体調大事ないですが、貴方様の体調の方が心配です〃
〃私も澤名様に会いたい〃
〃私も澤名様と出掛け、歩きたいものです。出店に酒蒸饅頭のお店がありまして、宜しければ一緒に行きたい〃
蜜の文を毎晩読み返す…
胸が高鳴り、会いたくて溜まらなくなる。
次はいつ会えるだろう。
早くこの大量の書物を終わらせなければ。この晩も残業を重ねていると、局社の戸が開き
『仟之助、今日も残業か』
聞き覚えのある声に振り向くとふんわりと微笑みを浮かべる佐汐貞成がいた。
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