昼想夜夢(仟之助)

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貞成はもうずっと清しか見ていない。 ずっと清の手に触れていて。男同士なのに…まるで〃夫婦〃の様だった。これが〃底根(ぞっこん)〃という物なのか。俺は蜜に向き直り、鞄から文を取り出し…渡そうと思ったが 『蜜』 呼んでも返答が無くて。 蜜の視線の先には… 清がいた。切なそうな、何かを諦めるような目で見つめ、顔を伏せる。…何故、その様な切ない顔をする。やはり蜜は…清が…。胸がちりっと痛むのと同時にもやもやと苛立ちが芽生えてくる。俺は文を鞄にしまい… 『蜜』 ともう一度、今度は耳元で囁いた。 蜜の身体がビクッと揺れる。 『はい』 蜜が俺に振り向く際に肩をグイッと引き寄せ、頬に軽く口付けた。 『…っ』 清と貞成がいる前だが。関係ない。むしろ清に見せつけたくなった。 …俺と蜜の前髪が交わる。 蜜の顔が…カァッと赤く染まり、戸惑いながら身体を離そうとするが、俺をそれを許さなかった。 『あの…っ澤名様』 『仟之助と呼べ』 もう少し…親密さが欲しい。 名で呼び云いたい。 『ほら、名で呼んで』 俺は頬に手を付いて微笑みながら蜜を間近で見つめた。蜜の髪に優しく触れる…。 だが、蜜は目を伏せ 『すぐには…呼べません』 解っている反応だったが。蜜の…清に遠慮している様な雰囲気が気に入らなかった。 『駄目だ』 俺は蜜の手をギュッと握り 『呼ばなきゃ二人の前で口付け以上の事をするからな』 つい向きになってしまう。 『も…子どもじゃないんですから』 蜜がクスッと笑ったが 俺は立ち上がり蜜の身体をグイッと抱え 『わ…っ』 再び座り直す。俺の膝の上に座る様な形になりそのまま背後から抱き寄せた。抱き寄せた身体から甘い花の様な香りが広がる。清と貞成が驚いた様に俺達を見つめてきが、俺は全然構わずに続ける。 『澤名様…っ離してくださ』 『では名で呼べ』 『だからそれは』 蜜の襟元にスッと手を入れて白い胸を撫でる。蜜の身体がビクッと跳ね、着物の上から手を掴まれた。 『澤名様…っやめ…、ん…っ』 しかし、そんな震える手で掴まれても説得力がない。そのまま胸の突起をギュッと強く摘まんだ…。 『ゃ…だ、澤名様…っ』 声が溢れそうになるのを必死に我慢しているのか、涙目になる蜜。そんな蜜に…どうしても意地悪な気持ちを止められない。
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