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昨日は昼になる位まで仟之助は俺を離してくれなかった。朝も熱く甘く触れられ、朝方まで抱かれたというのに…仟之助の熱は止まらなくて。しかし流石に疲れ、汗ばみながら俺達は互いに苦笑した。その後…寝殿の奥にある風呂に入り、互いに洗いながらゆっくりと湯に浸かった。仟之助の腕はいつも俺の肩に回っていて。湯に浸かりながら…また色々な話をした。
主に仟之助の仕事の話。そして俺の実家の話に興味津々に耳を傾けていた。
『いつか蜜の実家に連れてってくれ』
と優しく微笑まれ
何故俺の実家に一緒に行きたいなどというのか…仟之助の言動にどこまで本気で捉えて良いのかわからない。
遅めの朝食を…いやもう昼食の時になっていたが。互いに食べ合い、とても穏やかな時が流れ…仟之助の優しい眼差しに胸がずっと鳴っていた。それから…帰る直前まで俺を背後から抱き締め、時折俺の髪を擽る。
ふと、仟之助が何かを思い出した様に側に置いてあった鞄からいくつかの包みを取り出した。
『これは蜜に』
差し出されるままに包みを開くと
丸いコロンとした紅の硝子珠が付いた簪。そして、二つ目の包みには襟元に入れておける大きさの櫛。
どれも、まるで女子が使うような物ばかりだが…仕事で使えるようにと仟之助が考えてくれたのだろう。その気持ちが嬉しくて、胸がじんわりと熱くなる。
最後の包みを開けると、長い弦紐の先にキラキラと輝く琥珀色の小さな丸い天然石が付いていて。仟之助が微笑み
『蜜、そのままじっとして』
背後にいる仟之助が、俺の首にその弦紐をそっと回し付けた。胸元には琥珀色の天然石が美しく輝く。俺は胸元の天然石にそっと触れると…触れた手ごと仟之助に手を柔らかく包み込まれる。
『実は私とお揃いなのだ』
少し照れたように云いながら鞄の中から同じ包みを取り出し、開いた。俺と同じ弦紐に琥珀色の天然石が輝く。
『蜜、私に付けてくれないか』
と云われ、小さく鳴っていた胸が高鳴り始めたが…仟之助から弦紐を受け取り、俺は立ち上がろうとした。仟之助がクスッと笑いながら俺を再び座らせ腰に腕が回る。
『正面から付けて欲しい』
と囁かれた…
正面からと云われても、どう付けたら良いかわからない。戸惑いながら仟之助を見つめると、俺の手に弦紐を握らせ
『こうするのだ』
自分の首に俺の手を交わらせた。仟之助に正面から抱き着くような体制になり…
『あ、の仟之助様…あの』
恥ずかしくて溜まらなくなり、弦紐を付ける処ではない。
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