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『ありがとう。上手いね支那蕎麦は』
清が何事もなかったかのように俺の手から…手を離して微笑む。俺は蕎麦を食べながらずっと気になっている事を口にする。
『清様…』
『ん?』
『清様は…どうして私に…優しく接して下さるのですか』
『………』
清が俺を見つめる。それが気恥ずかしくなり
『あ、すみません。あの忘れて下さい』
気を紛らわせるためにお出汁を口にした。
…清が静かに話始める。
『どうして…か。それは私にもよくわからないのだ』
清が微笑し俺の髪に触れた。
『昔の…男壇に入ったばかりの私に似ているような気がして。何故か放っておけない…。今まで入ってきた下請けは皆、夜逃げしてね。根性の無い奴は嫌いだったから。でも……』
……清の指先が俺の耳から頬、首に下り
『そなたは…政は、目が違う』
俺に視線を合わせてきて鼻が引っ付きそうなぐらいに、顔が近付いてくる。
戸惑っていると…清が微笑しながら顔を離した。
『それに、政は可愛い』
『可愛い…ですか』
『ああ、可愛いよ』
『そんな事…言われた事がないのでなんだか恥ずかしいです』
俺が清に照れながら微笑むと
『…その顔。本当に可愛い』
『も…あの、やめてください』
顔が真っ赤くなるのを堪えられなくて…清から顔を隠した。清がふっと吹き出して笑い始める。
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