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源氏名お披露目の宴
俺達は男壇に帰り、清は仕事の支度を。
俺は清が着物を羽織る手伝いを施す。
『政、それでは左が短い。下ろす帯はもう少しだけ長目に』
『はい』
帯は固くて結いにくい。それに清の胸元よりも少し低めに合わせなければならなかった。清は俺よりも頭半分ほど背が高かったから、いつも苦戦する。
清がクスッと微笑み、優しく肩に触れられ
『まだ時間はあるから焦るな』
俺がきちんと結えるまで待ってくれた。
『じゃあお酒や肴を用意して。私は布団に香を焚き染めておくから』
『はい清様』
俺は漆喰の台にお酒や出来上がったばかりの肴を用意していく。今宵のお酒は紀州のお酒。肴は鰯の佃煮、椎茸の油揚げ、胡瓜と豆腐の胡麻合。鍋から小さな小鉢に入れていく…入れ終わったら隣の部屋に持って行く。
俺は立ち上がり
『清様、行ってきます』
肴が入っている小鍋等を持ち……
部屋から出て長い廊下を歩くとすぐに隣の部屋に到着した。
俺は小さく戸を叩くと、いつもなら俺と同じぐらいの年齢の下請けが出て来て鍋を受け取ってくれるんだけど……
『入って』
と部屋の中から声が聞こえた。
…あまり男娼同士での交流は無い為、部屋に入って良いものか戸惑っていると…静かに戸が開く。
部屋の戸口から俺を覗く。
…清と同じぐらいの年頃の
またとても美しい男が居て…目が合った。
髪が腰まで長く、深い黒が艶っぽく光っている。瞳は…清の大きな瞳ではなく、切れ長でスッとした顔立ちをしていて。
清とは違う種の美男だった……
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