源氏名お披露目の宴

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清の部屋に着き…清がさっと戸を閉める。 無言のまま俺の方を見ない清。台の上の肴やお酒を整えていく…。何も言わない清に…嫌われてしまったような感覚に陥り、溜まらず…俺は清のすぐ後ろに膝真付いた。 『清様…申し訳ございません』 目尻に涙が浮かんでくる。清の手が止まり、俺の方にゆっくり振り返った。 ……やんわりと抱き締められ 髪に触れられる…… 『…政は悪くない。安ずるな…。私が…峰の下請けが居なくなった事を忘れていて。政に行かせた私に隙があったのだ』 俺の身体をそっと離して真剣に見つめられる。 『でも…この男壇の中には下請けに手を出して遊ぶ者がいる。それを忘れるな』 『はい…』 清がふんわりと微笑み 『泣くな。心を強く持て』 いつの間にか流れる涙を…清が襟元に忍ばせていた手拭いで拭ってくれた。 『化粧を施す…白粉を練ってくれ』 『はい』 俺は清の横に座り、薄く白粉を練って綿に浸けて…清の美しい肌に平たく塗っていく。 『…政の源氏名お披露目の日取りが決まった。五日後の三の刻に行う。着物の仕立てが間に合いそうで良かった』 清が微笑し俺を見つめる。 『あの…源氏名とは何ですか?』 『ああ、教えていなかったか…この仕事は皆本名を名乗らない。本名は伏せ源氏名で呼ばれ仕事をするのだ』 『そう…なのですか。では、清様も源氏名…』 『…そう。私の清も源氏名だ』 『本当の名は何というのですか』 しばらくの沈黙が流れる。清が俺の頬に触れて 『知って…どうする』 優しく苦笑する清…。 『本名を知ったら…清という存在が政の中で変わるかもしれない。…政、紅を唇に付けてくれないか』 『…はい』 俺は…本名を知りたかった。清の全てを知りたかった。…けど…清が言いたくないのに、無理に聞いてはいけない気がして。俺はそのまま…清の唇に紅を塗った。
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