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あのフワフワと柔らかいイメージの可愛い青年が従兄弟?
彼が恋人は俺の勘違い?
今でも俺が好き?
今日に賭けてた?
真澄の言葉で混乱したせいで涙も止まっていた。
俺を束縛して、締め付けて、真澄だけの俺にしたかった?
あの頃の真澄はいつも俺が何をしても飄々としていて、俺は意固地になって我儘を言って困らせてみたりしていた。もっともっと俺に夢中になって欲しかった。その思いが真澄には重くなって俺が嫌になったんだと俺は思ったんだあの時。
『好きな奴が出来た』あの言葉は俺を好き過ぎたから出た言葉?
頭を下げたのは俺を束縛しない為?
その時、俺の中に溢れたのは喜びだった。それはあの時、俺が求めていたモノだったから。束縛して締め付けて欲しかった。俺だけの真澄で居て欲しかった。こんな思い俺だけじゃなかった?
「束縛して、締め付けて真澄だけの俺にするのか?」
俺の言葉に、真摯に真っ直ぐと俺に向けていた真澄の瞳が揺れた。
「ごめん。こんな思い虹音には重いよな?」
違うそんな事を言わせたかった訳じゃない。だから今度は俺が真澄へと手を伸ばした。
「違う。俺を束縛して、締め付けて欲しい、俺には真澄しか無いん……」
俺の言葉の終わりを待たずに真澄の力強い腕に俺は囚われた。その力の強さに嬉しい目眩がした。
汗に混じって香る真澄の懐かしい匂い、温もり。俺からも腕を回して抱き返していた。
「本当に良いのか?今ならまだ引き返せるぞ?」
耳元で囁かれる言葉。
「離さないで欲しい」
「本当に良いんだな?虹音。……虹音!俺から離れないでくれ。頼む!」
ふただび強く抱き締めて来た真澄の大きな背中が震えていた。それは今までの俺が知らなかった姿。きっと俺の知らない顔が、姿がいっぱいあるんだろう。それがこんなに嬉しいなんて。
「もう離れない。離さないで!」
俺も強く抱き着いた。
終わらせたはずだった。
今日のライブが俺の思いの区切りになるはずだったのに、Blood Pigeon、彼らのライブは俺と真澄に新しい時間を運んできてくれた。
強く痛い位の真澄からの抱擁は、静かな道に酔っ払いのオヤジが大きな声で昔懐かしい曲を歌いながら現れるまで続いた。
夏の暑さなんて気にならない。
俺たちは熱い抱擁に酔いしれた。
明日から、いや、今から俺の新しい恋が始まる。
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