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「次ー! スパイク練行くぞー! イチ! トス上げてくれ!」
主将の浪川先輩が声を張り上げ、レシーブ練をしていた僕は仕方なしに手をあげる。
「ふぇーい」
「気合い入れろよ、イチ!」
「ほら、コーチの顔が能面みたいになってるぞ」
同じ二年の坪井と神崎は、同中出身で僕の唯一の理解者でもある。
「お前さ、そんなだからいつもレギュラー落ちするんだろ……セッターとしての技術は高いんだから、もうちょっと気合い入れろよ。インターハイの予選、来月だぞ」
副キャプテンの樋口先輩に背中を叩かれても、僕の信念は揺るがない。
「いやぁ、僕本番に弱いんですよね」
実際本番に弱いのだ。
「あの〝桐生クラブチーム〟出身とは思えない無気力っぷりだな」
仰る通りで。こうしてバレーを続けている僕が一番驚いている。
だってあの地獄のような日々は、まさに僕の人生で暗黒時代だった。
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