謀略エッジ

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『泣く子も黙る桐生クラブ』 陰で大人達からそう呼ばれていたのを知ったのは、クラブに所属してから三年目。当時小学五年生の時だった。 身体が貧弱で、背も低い僕を心配した両親が知り合いの伝手で知ったこの桐生クラブ。 ほんのボール遊び程度だと思っていたこの小学生のクラブチームが、全日本大会で入賞常連クラブだなんて両親は知る由もなかったのだ。 そんなわけで小学二年から、僕の暗黒時代は幕開けとなる。 連日の過酷な体力トレーニングと、バレーの基礎練習を小さな身体に叩き込まれる。 土日は朝から夕方まで練習漬けの日々で代表兼鬼コーチである桐生京子に、口答えするだけの度胸などあれば、僕はとっくの昔に辞めていた。 それなのに、何で未だにバレーを続けているのか。 それは僕に抜群のセンスがあったからだ。 それはバレーの才能とは少し違っていて、変わった能力が偶然バレーに役立った、と言う表現が正しいかもしれない。 あの暗黒時代を生き抜いたのも、こうしてバレーを続けているのも。 僕に、絶対目測(ぜったいもくそく)という能力が備わっていたお陰なのだ。
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