謀略エッジ

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「お願いしまーす」 ネット脇で手を挙げる。緩やかなボールがコーチから僕に上げられる。落ちてくるボールを目で捉えながら、セットアップのコースを思案する。 最初はウイングスパイカーの神崎。 最高到達点は335センチ。体調はいつも通りだから、一本目は3センチ下げて様子見しようか。 額上で捉えたボールを、目測で予想地点へと上げる。大丈夫。狂いのない手応えに頬が緩む。 トスと同時に開始された助走、キュッと鳴る靴音、高く跳ね上がった神崎の身体からしなやかに振り下ろされた腕が、ネット越しのコートへとボールを打ち込んだ。 「どんぴしゃ!」 着地と同時に神崎がニヤリと笑う。 僕も得意顔でサムズアップする。 まぁ、これが無ければバレーなんてしてないよな。 「調子いいし、もう少し上げれるか?」 「わかったよ。次は2センチ上げるからしっかり跳べよな」 「任せろ!」 絶対目測と僕が勝手に名付けたこの能力。 つまり目測だけで正確な距離が掴めるのだ。 トスのコース、ボールとの距離、選手に合わせたボールコントロール。 誤差はわずか数ミリ程度で、僕の体調不良の時以外はおおよそこの能力が発揮された。 そう、体調不良の時以外は。
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