学園初日 「はじめての学園」

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学園初日 「はじめての学園」

かすかな揺れがおさまり、外から扉がノックされた。 「ついたぞ」 エドアルドはロックを解除し扉を開けると、さっと飛び降りた。 乗り込むときに使った踏み台が設置されるのを待っている理紗に両手をさしのべてくる。 「おいでメアリローズ」 理紗は眉をひそめた。 「けっこうです」 「だがここに踏み台はないぞ」 「えっ、無いの?」 エドアルドの後方に立つ行者に目をやるとさっと顔を背けられた。つまり王子は嘘をついている。 「あっ」 理紗は手にしていたバッグを取り落としてしまった。 「ごめんなさい、エド。拾ってくださる…?」 しおらしく頼むとエドアルドが誇らしげな表情で腰を折り、地面に落ちているバッグをつかんだ。 その隙に理紗は馬車から飛び降りた。 気づいたエドアルドが顔をあげるが制止は間に合わない。   「メアリローズ!」 押さえていたスカートが思いのほか舞い上がり、腿のきわどいあたりまでが見えてしまった。 だが、エドアルドを出し抜けて理紗は満足だった。 手を差し出してにっこり笑う。 「拾ってくれてありがとう」 「……今みたいな振る舞いは感心しないな」  あらそう。 肩をすくめてさっさと歩き出そうとする理紗をエドアルドが呼び止めた。 「どこへ行く。エスコートすると言っているだろう」 「学園までと言ったのは王子ですよ」 「言葉のあやだ。もちろん中まで一緒に…」 うんざりしながら振り向いた理紗の目の前で、ドンッとエドアルドの体が衝撃に揺れた。
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