学園初日 「近すぎる距離」

1/1
300人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ

学園初日 「近すぎる距離」

深い藍色の空にキラキラと銀色の星が瞬いているようだった。 エドアルドの美しい瞳に理紗はぼうっと見とれた。 「メアリローズ…」 吐息が唇をかすめたとき、背筋にしびれるような快感がつきぬけた。 とっさに顔をそむけると、エドアルドの唇が頬にあたった。押し返すように胸に手をついたがびくともしない。 すかさずあごをとらえられ、抵抗むなしく唇を奪われた。 エドアルドの唇はしっとりとやわらかく羽のように軽やかに理紗の唇を愛撫した。 何度もついばむように唇を奪われ、鼻での呼吸がままならず理紗はめまいにおそわれた。だがここで口を開いたら一気に攻め込まれるのは火を見るより明らかだ。 どれくらいそうしていたのか。 ふいに光が差し、エドアルドの唇が離れていくのに気づいた。 ぼんやりと目を開くと目元をかすかに上気させたエドアルドが理紗をじっと見つめていた。その唇には理紗がつけていた赤いルージュがまだらに色移りしている。 なんて淫らで扇情的な顔なんだろう。きっと自分も同じような顔をしているに違いない。 理紗は大きく息をはくと、震える手でハンドバックを探りハンカチを取り出した。エドアルドの唇をそっとぬぐう。 熱く見つめる視線から気をそらすため、何かしていないと間がもたない。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!