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学園初日 「王子の威光」
「……エドアルド王子?」
シュバルツはいぶかしげな表情を浮かべた。
「私の婚約者です。ご存じありませんでしたか?」
どうだ! と理紗は胸を張った。
婚約解消うんぬんで揉めたことはこのさい忘れることにした。
エドアルドはこの世界の王子だ。
何番目かは知らないが、黄門さまの印籠並に使える名前に違いない!
どS教師めまいったか!
「存じ上げておりますよもちろん」
「そう、もちろん……えっ?」
カチリ。
「えっ?」
な、なんで鍵を閉めたシュバルツ!
後ろ手で鍵を閉め、シュバルツは手にしていたグラスをベッド脇のテーブルにおいた。その横にはずした眼鏡を添える。
たったそれだけで男の印象が変わった。
冷たい輝きをはなつステンレスの囲いをなくした素顔は、知的な印象はそのままに穏やかさや人間的な暖かみを感じさせた。
琥珀の柔らかそうな髪とダークグレイの瞳がまばたきもせずこちらを見つめている。
まるで暗示にかかったかのようだった。
理紗はその瞳にとらわれたまま身動きひとつできずにいた。
ドクドクと心臓が脈打ち、呼吸が早まったような気がした。
自意識過剰と自分でも思うが、シュバルツの体から性的なエネルギーが放出されて、それが理紗のところまで流れてきて、体を満たしていくような気がした。
ぼうっとする理紗にひっそりと男が微笑った。
「やっぱりきみには素質がある」
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