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異世界初日 「メアリローズになっちゃった」
「メアリローズ…?」
呆然とする理紗におばさん…ドロレスは動かしていた手をとめた。
「お嬢様のお名前ですよ。ほんとにもう今日はどうなさったんです?」
「私…。いえ、なんでもないです」
「変なお嬢様だこと」
ふふふと笑うドロレスに髪を結ってもらい、出来映えを鏡で確かめた。
キラキラと日差しに輝く金の巻き毛と少しつり気味の大きな瞳。
まばたきをするだけで風が巻き起こりそうな、長くけぶるようなまつげ。
理紗は目を見開いた。
そこに映っていたのは、友人が憎んでいたあのメアリローズだった。
「メアリローズになっちゃった…」
「なんですって? お嬢様、なにかおっしゃいましたか」
「いえ、なんでもないです」
まぁいいか。どうせ夢なんだし。
と、軽く考えていたのだが、遅い朝食を済ませピアノと声楽のレッスン(なんなくこなせた)が終わり、ティータイムになっても理紗は目覚めなかった。
長い夢ね…とお貴族さまの生活に少しうんざりしてきた頃、理紗に来客の知らせが届いた。
「婚約者様がご機嫌うかがいにお見えですよ」
ニコニコ顔のドロレスがピッチリ糊のきいた封筒を理紗に差し出した。
表には流麗な筆記体でメアリローズと記されている。
裏には差出人の名前はなく、蝋封に紋様が記されていた。
「こんやくしゃ?」
って誰よ。
不審そうな理紗にドロレスがはじけるように笑った。
「はあっはっは! なぁにおっしゃってるんですかっ。エドアルド王子に決まってるじゃないですか」
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