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学園二日目 「リック」
めげない理紗にリックが盛大なため息をついた。
「…勝手にしろ。服が汚れたとあとで文句を言うなよ」
言わないわよそんなこと。
理紗は肩をすくめるとリックの桶の横に二つ桶を足した。
そこに飼い葉をいれる相手の不機嫌な顔を見てクスリと笑った。
せっかくのイケメンが台無しだと思ったのだ。
そしてハッとした。リックはただの厩務員にしては見目がよすぎる。
日に焼けた精悍な顔つきに、癖のある黒髪をうなじで縛ったワイルドなイケメンだ。
白い無地のTシャツの袖をねじり肩を出して、下は濃い色のデニムという簡素なスタイルがストイックでよく似合っている。
その筋肉の盛り上がった肩や形のいい尻に理紗は眉を上げた。そして見とれそうになっている自分に顔をしかめた。
「なに百面相してるんだ」
「なんでもない」
それからはリックも理紗も黙々と作業を進めた。
飼い葉の量は馬一頭一頭によって違うらしく、それがわからないためバケツへの補充作業は早々に諦めた。理紗が補充したものをリックがチェックし、量を増やしたり減らしたりと二度手間だったからだ。
かわりに空になった桶にせっせと飼い葉を詰めリックの元へ運んだ。
すべての馬房を巡り、何往復したかわからない頃、外からかすかに鐘の音が聴こえてきた。
「あの音は何?」
「正午の鐘だ」
リックの答えに理紗は飛び上がった。いけない!
「もう行かなくちゃ! じゃあっ」
あいさつもそこそこに図書館へ全力でダッシュした。
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