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学園二日目 「メアリローズの書」
その本は彼女の設定資料集のようだった。
名前と家柄、公爵家の見取り図に、彼女に関わるキャラクターの紹介などが記されている。専属侍女のドロレスや執事のヒュルケン、御者のビリアムの名前もある。
それによるとメアリローズの特技はピアノとバイオリンで趣味は乗馬とあった。
生まれる前からの王子のフィアンセで歳は十八。
二十歳の誕生日に婚姻予定とある。
そしてページをめくる理紗の手が止まった。
「メアリローズの末路…?」
不吉な書き出しの文章にドキリとした。
そこにはヒロインが王子を攻略した度合いにより、メアリローズの行く末が変化するとある。
「学園追放、婚約破棄、王子の…殺害」
バサッと本が床に落ちた。
理紗はそれを呆然と見つめていた。
「なんなの、殺害って…」
「メアリローズ?」
突然の呼び掛けに理紗は飛び上がった。
振り向くとそこには怪訝そうな表情のエドアルドがいた。
「あ…」
「遅くなってすまない。昼食を取りに行こうか」
「え、ええ」
差し出された肘に腕を絡め、不安感からぎゅっと力が入る。
「どうした?」
「ううん、なんでも」
「今日は天気がいいからカフェテリアのテラス席でと思うんだが、どうだ」
そうね、と頷きながらそっと背後を振り返ると、床に落としたはずの本は跡形もなく消えていた。
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