学園三日目 「アリスの書」

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学園三日目 「アリスの書」

   メアリローズに幸福な未来はありえないのだろうか。 ゲームの主人公はあくまでヒロイン・アリスであり、メアリローズはその邪魔をする存在でしかないというのは悲しいことだと理紗は思った。 誰にだって幸せな未来が訪れたっていいではないか、と。 あの本にあったのは、アリスが王子を攻略した場合の結末だった。 ならばアリスが王子以外の攻略対象とうまくいけば、自分は破滅せずにすむのだろうか。 そうあってほしいと心から願った。 だがこればかりはアリスの選択次第だ。 翌日、理紗はまず図書館でアリスについて調べ、同時に他の攻略対象たちについての知識を得ようと考えた。 やはり会議があるというエドアルドと別れ、図書館へ足を向けた。 《 花咲ける乙女 》の書架を見つけ、アリスの書を手に取った。 ページを開きそこに書かれていたことに目を走らせる。 アリスは没落した子爵家の長女で下に弟と妹がいるらしい。 なんと借金のカタに二十歳で結婚することが決まっているとある。 その相手というのが二回り以上も年の離れた変態ロリコン貴族で、その結婚から救ってくれる裕福な相手をゲットするために学園に通っているのだと。 な、なんてゲスい設定なの…。 本は半分以上が白紙で、アリスについての末路は記載されていなかった。 可能性は無限大ということなのだろうか。 閉じた本を棚に戻した理紗は驚き目を見張った。 スッと音もなく空気に溶けるようにして消えてしまったのだ。
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