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学園三日目 「攻略対象の書」
アリスの本が消えた。
理紗は大きく目を開いたまま棚に並ぶ他の本のタイトルに目を走らせた。
昨日床に落としたメアリローズの本もやはり見あたらない。
「…一回しか読めないってこと?」
手に取った本を手放すと消えてしまうのだろうか。
だとしたら攻略対象の本も同じと考えた方がいいだろう。
棚に並んでいるエドアルドの本をじっと見つめながら理紗は思案した。
アリスの本同様大半が白紙だったら今読むのはもったいないのではないだろうか。
エドアルドの隣にはドレイクの本があり、理紗の指がうずいた。読みたい。ものすごく。でも…。
──まだだめ
棚にのびそうになる手をぎゅっと握り、その場から離れた。
図書館にいては誘惑に負ける。
そう考え、理紗はエドアルドがいるであろう教会に足を向けた。
そしてハッとした。
そういえば学園初日に落としたバッグをまだ回収していない。
ワンピースのポケットから学園の見取り図を出し、警備局の文字を探した。
図書館を背に見取り図をくるくる回して方向を確認していると、背中から声をかけられた。
「……なにをやってる」
パッと振り向くと、そこには騎士のドレイクがいた。
「警備局に行きたいんですけど…、あっち?」
「……こっちだ。ついてこい」
あきれ顔の相手について歩き出す。
その広い背中を見つめつつ、さきほど図書館で見つけた本のことを思い返していた。
「──ドレイクさんはアリスという生徒をご存じですか?」
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