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学園初日 「エスコート」
エスコートぉ?
そんなことを男性に言われたのは生まれてはじめてだった。だが理紗は感動するより胡散臭さを感じていた。
婚約を解消したいと言ったのを忘れているのだろうか。
「王子も学園に通われるのですか?」
「他人行儀な言い方はよしてくれ。エドでいい」
「……」
「それから質問の答えはイエスだ。君と同じ学園に通うことになった」
「…王子はいくつなんです?」
「エド」
「王」
「エドだ」
理紗はイラッとした。しつこい男は嫌いだ。
「江戸はいくつなんです?」
「イントネーションが…。まあいい。キミと同じ十八だ」
「じゅうはち」
理紗は目を見開いてエドアルドの全身をジロジロ見た。
いやどう見ても未成年には見えないって。信じられないものを見るような目付きにエドアルドは自身を見おろした。
「……なにかおかしいか?」
「いえ別に。それからエスコートは結構です。家のものが送ってくれますから」
たぶん。
確認してないけどこの世界観でメアリローズのようなお嬢様なら馬車で登校するのよね?
「それは私が送ると言って断った」
「はあ? なにを勝手に…。な、なによドロレス」
理紗の後ろからやって来たドロレスが小さなハンドバッグをエドアルドに差し出した。
ちょっと! それはじめて見るバッグだけどたぶん私のものなのよねっ?
「お嬢様をよろしくお願いいたしますね」
「ああ。さあ行こうメアリローズ。──昨日の話の続きもあるしな」
そう言うエドアルドの目がキラリと光った。
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