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学園三日目 「アリスという生徒」
「アリス…?」
怪訝な面持ちで振り返るドレイクの言葉を理紗は息を詰めて待った。
「悪いがわからん」
「焦げ茶色の髪で赤いカチューシャをしてるんですけど…。見たことあります?」
「カチューシャ?」
「ここら辺に着ける髪留めです」
頭頂部を指差す理紗にドレイクは首をかしげた。どうもピンときていないようだ。
「さあ。記憶にないが」
それがどうかしたかと目で問われ、なんでもないと首を振った。
本があったということはドレイクも攻略対象なのだろう。ということはアリスが接触していてもおかしくない。
なんとなくだがふたりが仲良くする様は見たくないと思った。
警備局で無事白いハンドバッグを回収し、理紗は教会へと足を向けた。
まだ昼食には早いけれどもすれ違いになるよりはいいと考えたからだ。
教会の二階にある王子のサロンにエドアルドの姿はなかった。
もうひとつ螺旋階段を右から上がると扉があり、かすかに人の気配がする。そちらが執務室ということだろう。
手持ちぶさたの理紗は一階に降り、礼拝堂を見てみることにした。
椅子も腰壁もすべてマホガニーで統一された空間は、重厚感と落ち着きのある雰囲気に包まれていた。
礼拝堂内の右手に小さな小部屋がある。本で読んだことしかないが、あれは告解室というやつだろうか。
扉に手をかけ、中をのぞきこんだ。
三畳ほどの室内には椅子が一脚あるだけだ。
「どうぞお入りください」
突然の声かけに理紗は飛び上がった。
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