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学園三日目 「自分の気持ち」
迷いを見透かされている。
理紗は心の中でそっとため息をついた。
「自分がどうしたいのか、どうすべきなのかよくわからないんです」
「すべきことなどありませんよ。あなたの心はあなたのもので、行動を自由に決める権利はあるはずです。まだ、いまは」
「………」
「あなたはエドアルド王子のフィアンセで、未来の王太子妃です。婚姻後はさまざまな制約に縛られることでしょう」
「…はい」
「侍女や護衛の騎士という幾重にも張り巡らされた監視の中、常に衆目にさらされ自由な振る舞いは許されなくなります。そんな生活が耐えられますか?」
「……それはちょっと悪意のある見方じゃありません?」
「あながち的はずれでもないと思いますよ。王家に嫁いだ女性は短命です。それだけ気苦労が多いということでしょう。──王子は婚姻についてはなんと?」
「時期を早めたいと…」
「貴女は乗り気ではない?」
「王子ほどには」
上手い答えだ、とシュバルツが笑った。
「嫌なら王子のフィアンセなどやめなさい」
「…そんな簡単な話では」
「いいえ簡単なことです。あなた方の婚姻は、あなたの父君の功績に対する褒美でしょう。娘が王子のフィアンセであるという肩書きで20年近くも優遇されてきたのですから、すでに褒美は受け取ったも同然。婚姻相手を自分の意思で選びたいとあなたが現国王に願い出れば良いのです。彼は話のわからない男ではないですよ」
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