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休日 「きみは不思議な人だ」
さて私もそろそろ…と理紗が切り出すと遮るようにエドアルドが手を握ってきた。
眉をあげ無言でその手を見下ろすとすぐに離してくれたがそわそわと落ち着きがない。
「顔色も良くなってきたし、馬車を用意させる間少し庭園を歩かないか」
「…少しだけなら」
腕を組んで向かった先は所々に噴水を配置したローズガーデンだった。ふんわりとやわらかな照明に浮かび上がるバラたちは、夜露を含んでしっとりとしている。
「このバラはこの間プレゼントしてくれたものと同じね」
ある白いバラを指差し理紗が言うと「正解」とエドアルドが微笑んだ。
「白いバラの花言葉は知っているか」
いいえと首を振るとエドアルドが立ち止まった。
つられて足を止める理紗を見下ろしてくる。
「"純潔"、"深い尊敬"、"約束は守る"」
懐から小型のナイフを取りだし、満開の花がついた一枝を慣れた手つきで切り取った。
「"相思相愛"、そして」
トゲをすべて取り払い理紗に差し出す。
「"わたしはあなたにふさわしい"」
バラを受け取り理紗は苦笑した。
控えめを装いつつもどこか傲慢な花言葉は、エドアルドそのものを表しているようだった。
「そう……。それは知らなかったわ」
「私もきみがあんなに優しく笑うとは知らなかった」
え? と聞き返すと真剣なまなざしで見つめられた。
「ミリーと接するきみは聖母マリアのように慈愛に満ちていた。それを見て私はやはり伴侶にはきみを迎えたいと改めて思ったよ」
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