異世界初日 「婚約者は王子様」

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異世界初日 「婚約者は王子様」

「やあ、メアリローズ」 王子は応接間にいた。友人に見せられたあの画像通りの容姿で窓辺にたち、理紗に事務的なあいさつをしてくる。 だが少し様子が変だ。 あのキラキラエフェクト満載の微笑みがない。 「あの…今日はどういったご用件で?」 「婚約者の顔を見るのにいちいち理由がいるのか?」 「は?」 そりゃいるでしょ。 このひと用もないのに何しに来たの? 困惑する理紗に王子はため息をつき、歩み寄ってきた。 思わず一歩後ずさるとピタリと足を止める。いぶかしげな表情。 「メアリローズ? 今日はなんだか様子が変だな」 「そうですか? ああ、そういえば少し具合が悪いんでした。そうでした。では今日はこれで」 なんか面倒くさ。 ぐるりと目を回しさっと背を向け立ち去ろうとすると、いきなり肩をつかまれた。 「ひゃっ!」 突然のことに飛び上がって驚くと、王子がまじまじと理紗を見つめている。 肩に置かれたままの手を振り払った。 「いきなりなんなんですか!」 「…すまない。公園へ散策に出掛けないか?」 「はあ?」 散策ってぶらぶらすることよね。 つまりデートのお誘いってわけ? 「具合が悪いって言いましたよね」 「だが嘘だろう?」 まぁそうですけど。 「気が乗りませんので。失礼」 スカートを持ち上げ身をひるがえす。 部屋を出る前に振り向くと、王子は驚愕の表情で理紗を見ていた。 にっこり微笑んでやる。 「あと婚約は解消したいと思います。──お互い乗り気じゃないでしょう?」
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