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「どうしたの?」
心配そうに声をかけて来た雅美の顔も、つるんとした紫色だった。雅美も賀茂ナスだった。
「だ、だって……賀茂ナス……」
そこまで言ってから、自分もつるんとした紫色であることに気付いた。
「この子ったら、何言ってるのかしら」
賀茂ナスは苦笑いを浮かべている。
賀茂ナスは急に恥ずかしさを感じた。
そうだ同じだ。わたしだって賀茂ナスだったんだ。どうしてサトイモだなんて思っていたんだろう。さっきまで入っていた糠味噌の中にもう一度潜りこみたい気分だ。
「まだ混乱しているのね、もう少し休みなさいな。賀茂ナスにはうまく言っとくから」
賀茂ナスの言葉に賀茂ナスは心から感謝した。持つべきものは友達、いや友ナスだ。
それから賀茂ナスに視線を移し、改めて頭を下げる。
「ありがとうございました」
賀茂ナスは照れたように笑った。その笑顔は妙に可愛かった。さっきまで、どうしていやらしいなんて思っていたんだろう。こんなにイケてるナスなのに。
「失礼します」
賀茂ナスは一礼して出て行った。賀茂ナスは改めて糠床に横になった。
「じゃ、お休み」
「お休み」
賀茂ナスは賀茂ナスに糠味噌をたっぷりかけた。目が覚めるころには、私も立派な古漬けになっているわ。そんな事を思いながら、賀茂ナスは目を閉じた。
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