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いつだって奇跡は片隅から起こる
◇◇
――隅っこにいるから気づかなかったよ。
昔から何回も言われた言葉だ。
「気づかなかった、ではすまされないだろ」
でも、それは仕方ないと自覚している。
だって私は地味で、目立たず、片隅がよく似合っているからだ。
誰とも仲良くならなくても生きていける。
そんな風に思った時期もあった。
「ああ、想定外だな……」
そんな私があなたに恋をした。
「どうする?」
でもどうすることもできなくて。
私は教室の片隅から、あなたをただ見つめていた。
「届けるしかないだろ」
この想いよ、あなたに届け!
なんて一丁前に切ない乙女心を抱いたこともある。
けど現実はそう甘くはなくて……。
ただ遠くからいつでも笑顔のあなたを見て、ドキドキするだけ。
「とにかく次で届けるしかないだろ」
でももう次はない。
来年になったら私は……。
「大丈夫。きっと大丈夫さ」
いつも友だちを励ましているあなたの言葉が、まるで自分に言ってくれているように感じる。
大丈夫。きっと大丈夫。
「知ってるか? 『いつだって奇跡は片隅から起こる』ってな」
「なんだそりゃ?」
「ばあちゃんが教えてくれたんだよ。さあ、もう時間がない」
「そうだな。誰だって間違いはあるさ」
「そうとも! 間違いは新たな物語の始まりさ!」
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