夏祭り

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夏祭り

 私は人の顔を覚えるのが苦手で、隣にすんでいる人の顔でもせめて週に一度くらいは見ていないと忘れてしまう。 私が引っ越して、今の家に来た頃のこと…。 近所の夏祭りがあって、ちょっと行ってみた。 小さなお祭りだと思っていたが、このあたりでは祭りが少ないらしく、祭りの会場は人混みでごった返していた。 たまたま並んだ焼き鳥の列で、よその子供が大人に挟まれて押し潰されそうになっていた。 仕方がないので、こっちにおいでと手招きして私の前の隙間を指差すと、助かったと言う顔をしてなんとか脱出してきた。 「ありがとう、おばちゃん。」 そういいながら、ちょこんとその列に入り焼き鳥をうれしそうに買っていった。  翌日のこと、家の表に出ていると、 「昨日はうちの子供がお世話になりました。」 ?…、と考えていると、 「うちの子供が昨日、焼き鳥のところであなたに、列にいれてもらったって聞いたから。」 思い出した! あの子供、隣の子だったのか。 「いえいえ、なんだか潰されそうになってたので。焼き鳥買えて良かったですね。」 なんて二言三言(ふたことみこと)話して、家の中へ引っ込んだ。 顔が覚えられない自分を、いつも後悔させられる。 でも…、 これだけは昔から、無理なのだ。 今回は良い方に転がったので良しとして、私の大好きな紅茶を入れながら、美味しいロールケーキを食べることにした。
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