「時々、僕は透明になる」より、 文芸サークル部員たちの会話

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速水沙織「私が言いたいのは、エロ先生のことではなくて、登場する順番がおかしいと言っているのよ」 鈴木くん「小説を読んでみたけど、ききょう先生が高校を訪問する許可を池永先生が出すからじゃないのか?」 速水沙織は眼鏡のブリッジを上げ、 「だったら、次は当然ながら部長の私なのね」と言った。 鈴木くん「そうだな。速水さんは部長だし、一番個性が強いし・・」 速水沙織「個性が強い?」 鈴木くん「ああ、そうだよ。自分でも分かっていると思うけど」 速水沙織「なんだか腑に落ちないけれど、まあいいわ。目立つ順番ということであれば」 鈴木くん「目立ちたいのかよ! 速水さんてそんな性格だっけ?」 速水沙織はしばらく考えて、 速水沙織「目立つ個性の順番なら、和田くんは一番最後ということになるわね。和田くんは主人公ではないし、影が鈴木くんよりも薄いし」 鈴木くん「何か傷つく言い方だが、そうなるかもな。和田くんは時々、いるかどうかも分からないしな」 鈴木くんは常々「影が薄い」ことをいつも気にしている。 その時、部室のドアが開き池永先生と和田くんが入って来た。 (この二人、よく一緒にいることがある) 池永先生は、速水部長と鈴木くんを見て、 「あれぇ、鈴木くんと速水ちゃん。もしかして、今まで二人で私の噂をしていなかったぁ?」 すると鈴木くんは背を正し、「いえ、そんなことは一言も言っていませんよ」と言った。 一方速水さんは、 「池永先生の場合、全世界の男どもが先生の噂をされているわ」と皮肉った。 すると池永先生は目を輝かせ、 「速水ちゃん、それ、本当?!」 池永先生は冗談が通じないタイプだ。 速水沙織は「そんなわけがないでしょ」とボソッと言った。 和田くんも「なんだか、僕の悪口を言われていた気がするよ」と言い出した。 鈴木くん「和田くんは気にし過ぎだよ。先生も過剰に反応し過ぎですよ。それに速水さんの冗談を真に受けていたら、キリがない」 (次頁に続く)
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