「時々、僕は透明になる」より、 文芸サークル部員たちの会話

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すると、速水沙織が火に油を注ぐように、 「そもそも先生のお話はしていないわ。池永先生が〇○○○先生だとか。和田くんが超影が薄いとか、そんな酷いことは一言も言ってないわ」 その言葉で和田くんは傷ついたが、 肝心の池永先生は理解していないようだった。 「速水ちゃん、何て言ったの? 〇○○○って、聞き取りにくかったけど・・その淫行エロとかむっちりとか、独身エロとか、もしかして隣の美術の先生のこと? でも美術の先生も私も独身は独身だし・・」 鈴木くん「先生、『超ミニスカ』は当たっているでしょ!」 池永先生は、スカートの裾を気にしながらも、 「そうねえ、少し短いとは思うけど、うちのクラスの男の子が、『もっと短い方がいいですよ』って言うのよねえ」と言った。 鈴木くん「男子は、よけいなことを・・」 速水沙織「まったく、さかりのついた男子はこれだから・・」 二人は大きく息を吐き、呆れ果てた。 そこに真面目な和田くんが耐えかねたのか、 「池永先生、いつも言いたくて仕方ありませんでしたが、今日はハッキリと言わせてもらいます!」と勢いよく切り出した。 「そのスカート、短過ぎですよ。校則違反だと思いますし、精神衛生上も悪いです! 膝上、いや、股下何センチなんですか! 僕のお母さんが見たら卒倒するレベルですよ。お父さんは喜ぶと思いますが・・」 と誰もが言わなかったことを勇気を出して言った。 即座に「お父さんは喜ぶのかよ!」と、鈴木くんが突っ込んだ。 その後、部室に静けさが広がったが、 鈴木くんと速水部長が口を開いた。 速水沙織「やっぱり、男の子は和田くんのように真面目で誠実なのがいいわね。言い難いことをガツンと言ってくれるのが頼もしいわ」 鈴木くん「そうだな、影が薄いとかそんなことは、男子の価値には一切関係ない!」 結局、最後には鈴木くん自身の「影が薄い」ことの弁明に終わった。 池永先生が和田くんの抗議をどう受け止めたのかは誰も知らない。 (おしまい)
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