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満員電車は戦い
朝日が昇ってしばらくした頃、わたしは電車に乗る。毎日同じ車両、同じ時刻、そして車内の同じ面子。
どこの誰かも知らない人達と、毎日同じ電車に揺られている。狭いスペースで片寄あって、目的地までひたすら我慢する同士でもある。
社会の荒波に揉まれて数年。満員電車というひとごみは、人間観察眼には最適だった。
通路には鞄に尖った牙のアクセサリーを着けて密着するOL風の女がいる。牙がみぞおちに入って痛いから必死で押し退けると、奇怪な目を向けられるのはわたし。痛かったのははわたしやねんけど。何でや。
ドアのすぐ横には毎日近くにいる人の悪口をTwitterにいちいち投稿する(しかも内容が丸見えなのに本人は気付いてない)女子高生。今日のターゲットはわたしになったらしい。さっそく投稿している。「満員電車で痛いとか言うな」だと。お前のみぞおちにも牙を押し付けたろか。
つり革に掴まったまま眠ったふりをして痴漢を試みるオッサンが、船を漕ぎながら顔を近づけてくる。困っていたら、隣のおばちゃんがスペースを上げてくれて助かった。
誰もいなくなってもまだ寝たふりしてるオッサン。起きるタイミング逃したな。でも、誰も寝てるなんて思ってへんで。
満員電車はネタに事欠かない。でもいい話はほとんど聞かない。社会の縮図かもしれない。
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