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とある休みの昼下がり
休日出勤中の母さんから連絡が入って、忘れ物のUSBメモリを会社まで届けた帰りだった。
休日の繁華街は歩行者天国になることもあって、人でごった返している。友達連れや家族連れ、そしてカップル。僕はその間を、母さんからお遣いのご褒美として貰った昼食代二千円をポケットに擦り抜けていく。
昼食はファストフードで安く済ませて釣り銭で何か買って帰ろうか、と算段を立てていた僕の視界の端にふと入り込んだ見知った人影に、足を止めた。
みどりさんだ。
みどりさんはうちの近所に住んでいて、僕より八つ年上だから今は二十一歳。美人で優しくて、ピアノと料理がうまくて、ちょっとおっちょこちょいだけど面倒見がよくて、僕が子どもの頃はよく一緒に遊んでくれた。だからありきたりだけど、みどりさんは僕の初恋の相手だった。
みどりさんが大学に入ってからは生活リズムがずれたのか道端でばったりなんてことも滅多になくなったから、姿を見るのはずいぶん久し振りな気がする。腰の辺りまである髪を右耳の下に寄せて結ったヘアスタイルと、春らしいパステルピンクのワンピースに、上に羽織った白いカーディガンもよく似合っていた。
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