夕暮れ時の雑踏にとけて

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亜唯と帰り道わざとゆっくり歩きながら帰る。 家に早く帰ってもろくな事が無いからだ。母は飲酒し続けている父の分までと仕事に行っており居なくて、父は飲んだくれては私に暴力をふるから。それで私は毎日怪我をしていた。母は一度父に暴力をふるわれたことからか、明日は我が身と、仕事で長時間働いて夜遅くに帰ってくる。 どっちみち早く帰っても帰らずとも、私に暴力をふる。だからちょっとした反抗心で亜唯には付き合わせて悪いけど、公園に寄って二人で勉強したり、漫画を読んだりして時間を過ぎさせていた。 その日は家に帰ると、いつもの様に父は飲酒していた。その日はいつもよりビールの缶が多かった気がする。 パチンコで負けたらしい。ブツブツと「俺の台に来ず隣のジジイの台に連チャンきやがった」など呟いている。 どうしようもない。 そんな父の横を通り過ぎ、自室へと早々と歩く。その時、父に呼び止められる。 「おい、お前は楽に学校行くだけで良いよなぁ」 父にとって、私は楽に見えるだろうか。何も楽な事なんて無い。あんたのせいで、私は、周りが離れていったんだ。あんたの付けた痣のせいで。 「俺はパチスロで稼いでるのにな。あいつもずっとどっか行きやがって。浮気でもしてるんじゃねえか」 あいつとは母の事だと思う。母は仕事をしている。私が父に振るわれている暴力については、何の関心も無いけれど、仕事で疲れて帰ってきた後に用事をしてくれている。 「稼いでもまた使ってるだけじゃんか!家にずっと仕事もせずに居てるくせに!」 あぁ、言ってしまった。 「うるさいな。黙れよ!お前に言われる筋合いはねえよ!」 そう言って振り上げられた握りこぶしを見て殴られると思って目を瞑る。 ゴキっという音が聞こえた気がする。咄嗟に庇った手の甲が痛い。絵を描けなくなっちゃうかもしれない。 歯向かうべきじゃなかったな。痛いな。 翌日の朝、お弁当を用意してくれていた母に怪我が見つかり、病院へ連れて行かれた。折れていた。
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