夕暮れ時の雑踏にとけて

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それは中学生の時の事だった。 私は中学生で初めて出来た友達の亜唯と毎日、二人の共通の趣味の絵で話を咲かしていた。 人を描き、影の使い方や色彩について学び、鮮やかな色彩で自分の個性を出しては、二人で語り合っていた。 「ねぇねぇ、茉衣!将来ね、二人で美大に入ろうよ!」 「美大?」 「美術大学の事だよ!茉衣もこんなに上手いんだし、将来二人で美大に行って色んな事を技術を学んで、漫画とか描こうよ!」 「二人で……。良いね!私プロットとネーム担当するから亜唯はコマ割りと作画ね」 「うわっ、茉衣がネーム適当に描いたら私大変じゃん!」 ぎょっとしたように手を無理無理と横に振る亜唯に、「えぇ、どうしよっかなー」と返す。 亜唯は私にとって、新しい世界を教えてくれる子だった。 私と亜唯に近づく子はあまり居なかった。 何故なら、私の腕や足に大きな痣や切り傷など様々な怪我をしていたからだった。 絆創膏で隠せるものでは無くなってきて、とうとう私と亜唯と仲良くしていた一人の子が訊ねてきた。 「茉衣ちゃん、ソレどうしたの?」 「ううん、何でもないし、大した事ないよ」 咄嗟に何でもないと返してしまった。 それからというもの、私の傍には亜唯しか居なくなってしまった。 離れていった原因は多分、私がその子達に怪我してるのを晒してしまって私と関わる事を避けるようになった。 無視されたとか虐められたとかそういう訳では無い。ただ話をしながら並んで歩いていても、私だけぽつんとその友達という枠から外れてしまったみたいにその子達の後を歩くだけだった。道が狭いから誰か譲りましょう、みたいな感じで私が譲っただけだった。その役目は私しか居なかったと思っている。
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